社会福祉協議会について
私たちが働く社会福祉協議会。地域の方から「社協って何?」と問われ、答えに戸惑ったり、うまく説明できなかった経験は多くの方が持っているのではないでしょうか?このページでは、社会福祉協議会について、その歴史や使命、そしてこれからの社会福祉協議会のあり方について、考えてみたいと思います。(文責:***)
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1.社会福祉協議会の登場の背景
- 社協は戦後、GHQによる社会福祉の民主化政策の中で登場する。しかし、実際にはその源流は1908年の中央慈善協会の結成にさかのぼることができる。中央慈善協会はその後、1921年に中央社会事業協会、1924年には財団法人となる。その後第二次世界大戦に突入する中で、社会事業を担う団体として全日本私設社会事業連盟、軍人援護会、戦災援護会、全日本方面委員連盟などが登場してくる。しかし、戦時下の社会事業は、戦争に翼賛的であったようである。
- 敗戦後、GHQが日本に入ってくる中で、民間の社会福祉の再組織化、また公私責任分離論という考え方が導入される。この公私責任分離論というのは、民間は行政に頼ってはダメ、行政も民間に頼ってはダメということが明確化され、また日本国憲法89条によって、公金を民間団体等に投入することが禁止された。
- 時は敗戦直後である。どの民間の社会事業団体は資金難に陥っていた。同時に国民の生活も疲弊しており、社会事業に自由に使える資金が必要になってきたのである。そこで登場してくるのが共同募金である。アメリカのクリープランド市で行われていた“コミュニティチェスト”を参考に、共同募金が始まった。1947年のことである。
- しかし、当時の共同募金には大きな課題もあった。共同募金でお金を集めることはできる。しかし、それを必要なところへの合理的な配分・共同募金の合理的利用については、共同募金の有する機能では担うことができなかった。ここに一つ、社会福祉協議会組織化の背景がある。
- 共同募金会が登場して4年後の1951年に中央社会福祉協議会が組織化される。これは、日本社会事業協会(1947年に中央社会事業協会・全日本私設社会事業連盟が合併)、同胞援護会(1945年に軍人援護会・戦災援護会が合併)、全日本民生委員連盟(1946年全日本方面委員連盟改組)の3団体が統合して、組織化されたものである。
- 社会福祉協議会が統合された背景を整理しておく。?。韮硲僂砲茲詭唄屬亮匆駟〇磴虜徳反ゲ宗Ω?私責任分離論の導入、?∪鐐阿?らの社会事業団体の存続するための既存団体の統合問題、?6ζ永膓發旅舁?的な配分・利用の組織の必要性、主にこの3つが挙げられる。
2.社会福祉協議会の使命
- 1951年に社会福祉協議会が結成されたことは先に述べてきた。この時の初代事務局長が牧賢一氏である。いわば、社会福祉協議会をつくった人物ともいえる。その牧氏の著書「住民福祉のための社会福祉協議会活動」の中に、社協の使命が記されている。
- それは、?‘団蠅諒欸鯤〇稾簑蠅硫魴茲鯡榲?としていない、??地域住民の自主的な協働活動・協働事業によって解決、?0貳冥嗣韻寮爾魴觸犬靴得?度の創設・改善、?こ銅鏥ヾ悄γ賃里料蠍澡?力の場が挙げられている。
- これを筆者なりに解釈したい。社協の役割はその地域に取り残されている福祉課題を調査(社会福祉調査・聞き取り・地域踏査・相談等)し、明確にすることが大前提としてある。そしてこの課題を解決するが、その方法は「地域住民の自主的な協働活動」によって取り組まれる。社協は地域住民の福祉活動を推進・支援することが求められる。住民の自主的な協働活動では解決できない場合は、行政等に向けたソーシャルアクションを起こす。また、地域内の福祉関係者・団体・機関との連携を密にする。
- このような活動を行うことで、福祉のまちづくりを行うことが社協の使命ということができる。
3.社会福祉協議会の地域福祉活動・コミュニティワーク
- このような社協活動は、コミュニティ・ワークという技法を用い行われる。これは、牧賢一氏が欧州から日本に持ち帰った技術で、社協設立当時はコミュニティ・オーガニゼーションと呼ばれていた。コミュニティ・オーガニゼーションは、いわば組織化を主とするものである。「地域組織化」「福祉組織化」「当事者組織化」などがそれである。社協の歴史が流れる中で、コミュニティ・オーガニゼーションの意味合いも含む、もっと広い意味合いを含む言葉として、コミュニティワークという言葉に変わったようである。
- 地域そのものを相手にし援助する間接援助技術である。例えば、小地域福祉活動ではオーガナイザー、ファシリテーターとしての役割、ボランティア・市民活動ではコーディネーターとしての役割、計画づくりではリサーチャー、プランナー、マネージャーとしての役割、ソーシャルアクションではアドボケーター、ネゴシエーターとしての役割が強調される。(※『新版地域福祉辞典』日本地域福祉学会編集 中央法規 2006年より)
- もっと噛み砕いて言うなら、地域の福祉課題を把握すること、課題の解決のために住民と協働すること、課題に関心をもつ住民を増やすこと、共通の課題をもつ当事者の組織化やボランティアグループ等の組織化により社会資源を増やすこと、さらに行政等にソーシャルアクションを起こすことで新しい制度・仕組みをつくられるよう働きかけことなどが、あげられるだろう。こういった取り組みを行うことで、福祉のまちに地域をかえていく、つくっていく。こうした社協活動の考え方は、牧賢一氏の理念を継承している。
- 社協はコミュニティ・ワークという技法を用い、福祉のまちに「地域を変える」という視点が欠かせない。「地域を変える」と言うことについて、「どう変えていくのか」「地域を変えるとはどういうことか」という点についてはそこそこの地域で考えていきたいものである。
4.社会福祉協議会の現状・課題
- 社会福祉新時代、社会福祉において地域福祉がメインストリーム化する中、社会福祉協議会の現状・課題にふれておきたい。
- まずは社会福祉協議会と介護保険である。社協が介護保険事業を展開する中で、本来の地域福祉部門がおろそかになっていたり、地域と在宅部門が連携がうまくとれていない状況がある。さらに、介護保険収入が自治体の財政難による補助金カットにも少なからず影響を与えている。
- また、社会福祉協議会は60年の歴史があるにも関わらず、未だ地域住民には「社会福祉協議会は何をしているのかわからない」と言われ、行政機関にも間違われる状況でもある。しかし、悲しいことに「社協とは何か?」との問いに明確に答えることができない社協職員が多くいることも事実である。
- 中央の動きとしては、「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」が厚生労働省によって立ち上げられ、共同募金の使い方や社協のあり方が検討されている。さらに、地域福祉学会の中では「コミュニティ・ソーシャルワーク」という技法がブームのように言われ、コミュニティワークに取って代わろうとする動きもあるのではないか。
- 社協は、その地域の課題を地域住民の手によって解決できるように支援する役割、「個」の課題を解決する(コミュニティ・ソーシャルワーク)と同時に、その課題を地域の課題にしていくコミュニティワークの役割こそが必要ではないか。今こそ、コミュニティワーク、コミュニティオーガニゼーションによる地域福祉活動が必要だと、社協の専門員は捉えるべきであろう。